僕は甘い玉葱が食べたいんです

百貨店一階道路沿いにほとんどのパンが一個四百円からと高飛車な値付け設定をしているパン屋さんが東京吉祥寺にはある。

立地、内装、美味しそうなパンを考慮すると妥当だろう。

いつも通り過ぎるそのパン屋だが、ガラスケース越しに玉葱とチーズとベーコンをこんがりと焼いたパンが目に入る。

もう僕は手に取ってレジに並んでいて、うきうきしていた。

代金を支払い、店員がパンを袋詰めする時に玉葱がポロっと落ちた。

美味しそうな焦げ茶色をした玉葱である。

店員は落ちた玉葱を拾わずに残りの大部分だけを袋に詰めると、僕は袋を受け取って外へ出た。

外へ出るとなんだか腹が立った。

店員がパンの全体的な形を保ったまま綺麗に袋詰めするのを優先させたからだ。

手が汚れても飴色の玉葱を食べたかった。

オシャレ気取りやがって畜生。